診療時間について

 
午前
午後

9:30-13:00/15:00-19:00
(受付は診療終了30分前で終了)

※土曜日は9:00-11:30、12:00-14:30(11:30-12:00休憩)の診療です。

休診日:水曜・日曜・祝日

詳細はこちら

〒221-0802
横浜市神奈川区六角橋1-6-14
白楽メディカルセンター4階

東急東横線「白楽」駅徒歩1分

詳細はこちら
   ヘルスケア大学 フェイスブック

子宮外妊娠とは

開業以来、ペインクリニックやプラセンタ注射、ピルなど様々な診療に携わっておりますが、私の本来の専門は「周産期」になります。ですので、これから少しずつではありますが、妊娠・出産にまつわるお話をさせて頂きたいと思います。

まずはじめに、当院でも年間3~4例の確定診断がある「子宮外妊娠」についてお話させて頂きます。妊娠のごく初期に胎嚢が確認できずに、産婦人科医から「子宮外妊娠」の可能性がある、と言われて不安な思いをされている患者様に読んで頂ければと思います。

「子宮外妊娠」という言葉を初めて聞かれる患者様も多いと思います。これは簡単に言ってしまうと、「子宮」という赤ちゃんを育てる子宮以外のところ(主に卵管など)で着床して妊娠してしまうことです。子宮外妊娠は、全妊娠の1~2%程の確率で起こるといわれています。

子宮外妊娠の判断は難しい

最近では産婦人科を受診される前に、市販の妊娠検査薬をお使いになる患者様も多いと思います。また産婦人科でも妊娠反応の尿検査を致しますが、これらの検査薬でわかるのは、妊娠しているかどうかまでで、その妊娠が子宮内に正常に着床したかどうかまでを判断することはできません。

子宮外妊娠の場合でも、妊娠反応は陽性になり、つわりが起こることもあります。産婦人科では妊娠反応が陽性であることを確認致しますと、次のステップとして子宮内の胎嚢(=子宮外妊娠ではないこと)を確認させて頂くことになります。

市販の妊娠検査薬で陽性反応が出る妊娠4週目頃は、正常妊娠と子宮外妊娠との区別がつきにくい時期です。なぜなら、一般的に妊娠5週目~妊娠6週目に入ると正常妊娠の場合、エコー検査で子宮内に胎嚢が見えるようになりますが、人によってまだ胎嚢が出来上がっていなかったり、多少の遅れがあったりするのです。さらには妊娠週数の数え間違い、初期流産など紛らわしいトラブルも多い時期であり、診断がなかなか難しい微妙な時期なのです。

このように、妊娠反応が陽性であるにもかかわらず子宮内に胎嚢が見えない、イコール100パーセント「子宮外妊娠」というではありません。あくまでもその「可能性がある」という診断で、ほかに考えられるのが流産や正常妊娠のごく初期であってまだ確認できない、などです。

当院の子宮外妊娠の診断

ここまでお読み頂いて、ぜーんぜん心配ないじゃない!とお感じになる患者様も多いと思います。しかしながら、産婦人科では妊娠の初期に胎嚢の確認が出来なかった場合に、必ず「子宮外妊娠の可能性がある」とお伝えして、次回のご来院をお願いします。

全妊娠数のたった1~2%の頻度であるにも関わらず、なぜ産婦人科医は必ず「子宮外妊娠」の可能性を患者様に知らせ、次回の来院をお願いするのでしょうか?

それは、陽性の反応が出たので安心して産婦人科での初再診を遅らせて、子宮外妊娠であった場合に受精卵で卵管破裂を起こしてしまい、母体の生命に関わるケースを実際に見ているからです。子宮外妊娠で多くみられる、卵管に妊娠してそのまま赤ちゃんが成長してしまい、卵管破裂を起こした場合には、かなりの大出血をきたし、放っておけばお母さんが死亡してしまうことが多々あるのです。

子宮外妊娠の初期は無症状なことも少なくありません。そしてある時、突然に全身状態が悪化するケースがほとんどなのです。しかしながら、そもそも子宮外妊娠というのは、症状が悪化する前の確定診断(=卵管などの子宮外の場所にはっきりとした着床認める事)が、ベテランの産婦人科医であってもなかなか難しいとされています(私は卵管への着床をエコーではっきりと確認したことがあります)。

したがって、ベテランの産婦人科医が数回も超音波検査(エコー)を行い、さらに血液検査の値の変化を確認しながら、長年の経験でおそらく子宮外妊娠ではと診断をつけるということになります。「あるはずの場所にいないことの証明」というのは、どんな分野であっても非常に難しいということなのです。

子宮外妊娠の症状

妊娠の初期に「子宮外妊娠」の可能性がある」と医師に言われてドキドキしている方、過度な心配は不要ですが油断は禁物です。当院の患者様で、以下のような症状が現れたら、すぐにクリニック、夜間は院長の携帯までお電話くださいね。

  • 持続した出血がある(生理の中程度くらい)
  • 激しい腹痛がある(会話が出来ないほど)

今は少し我慢してお腹の赤ちゃんがエコーに現れてくれるまで、しばらく様子をみましょう。赤ちゃんが迷子にならずに子宮内に無事着床してくれていますよう、スタッフ一同、あなたと同じ祈るような気持ちでお待ちしております。

子宮外妊娠についてよくあるご質問

どうして血液検査を行うのですか?

尿検査では、尿中のhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)に対する反応を調べます。

妊娠するとhCGが胎盤から分泌されますが、このhCGは尿中にも含まれており、妊娠検査薬はそれを検出して陽性の変色反応を示します。しかしながら、この尿検査は「定性反応」であって、ごくわずかな反応であっても+(陽性)として出ます。

つまり、尿検査でわかるのは妊娠反応が+か-かだけなので、きちんと子宮内に着床したかどうか、胎嚢が見える前に流産してしまったのではないか、等の詳しい情報は尿検査だけではわかりません(流産であってもhCGはごくわずかに残るため+になります)。

このとき重要なのが妊娠反応の強さです。血液検査は定量検査でhCGの値までわかるので、妊娠反応の強さがわかります。産婦人科医はこのhCGの値(強さ)を見ることで流産かどうか、大体の妊娠週数がわかります。hCGの値が極端に低ければ、胎嚢が見える前に流産してしまった可能性が高いことがわかりますし、胎嚢が見えないままhCGの値が高くなっていけば、子宮外妊娠の可能性が高いと予測が出来ます。

では、血液検査さえすれば子宮外妊娠であるかどうかの確定診断が出来るのでしょうか?

一般にhCGの値が1000単位/ℓを超えるようであれば子宮外妊娠の可能性が高くなります。しかし2000~3000単位/ℓあっても正常妊娠のこともあり、必ずしもそれだけで診断できるものでもありません。卵管やその他の場所にある胎嚢がエコーで見えることもありますが、よく見えないことが多いのです。

産婦人科医が子宮外妊娠であるとの診断を下すのは、エコー検査で子宮以外の場所に胎嚢が明らかに確認出来た場合や、hCGの値が高くなっていくのに胎嚢が確認出来ない状態が続いていて、かつ激しい腹痛や出血を伴う場合などです。

以上のような所見がとくにみられずに、単にエコーで胎嚢が確認できない場合は、まずは子宮外妊娠を疑いつつ次回の来院をお願いし、しばらく様子を見るということになります。

尿検査でプラスでしたが、妊娠していない可能性はありますか?

現在の医療では、尿検査の妊娠判定薬の精度が非常に向上しており、ごくわずかなhCG値であっても正確に陽性か陰性かを判断出来ます。

したがって、たとえ胎嚢が見えていなくても身体のどこかで妊娠していることには間違いありません。ただし、子宮内に着床したかどうかまではわかりません(また、既に残念ながら流産されていた場合でも陽性反応が出ることがあります)。

この先、もしも子宮外妊娠だと確定診断された場合、出産できますか?

とても残念ですが、子宮外妊娠=赤ちゃんが育つ子宮の中に着床していない状態ですので、赤ちゃんは育つことが出来ません。

次の赤ちゃんを正常にご出産できるよう、必要な処置を速やかに受ける必要があります。私たち産婦人科医は、迷子になってしまって育つことの出来ない赤ちゃんよりも、母体の生命の安全を優先させて頂くことになります。

この先、もしも子宮外妊娠だと診断された場合、どのような処置が必要ですか?

お母さん(母体)の安全のために、速やかに腹腔鏡手術や開腹手術を受ける必要があります。

最も多い卵管妊娠の手術では、ごく初期であれば開腹でなく腹腔鏡手術で済むこともありますし、卵管全てを切除するわけではなく、卵管を残す保存手術もあります。

また、母体の安全を優先し、片方の卵管を完全に切除した場合であっても、もう一方の卵管に異常がなければ、残った卵管で次の妊娠をすることが可能です。