赤ちゃんを風疹から守るため、妊娠希望の方は風疹の抗体検査を!
免疫のない妊婦さんが妊娠20週ぐらいまでに風疹にかかると、風疹ウイルスが母体から胎児に移行して、出生児が先天性風疹症候群と呼ばれる障害を引き起こす恐れがあります。その発症リスクは、妊娠1ヶ月での感染で50%以上、妊娠2ヶ月での感染でも35%以上と非常に高い上に、新生児が先天性風疹症候群にかかると白内障、難聴、先天性心疾患といった重大な症状を引き起こします。(その他にも、発育遅滞や精神発達遅滞なども報告されています。)困ったことに、この先天性風疹症候群は治療することができません。したがって、先天性風疹症候群を発症しないためには、妊娠中にお母さんが風疹にかからないようにすることが非常に重要なのですが、風疹ワクチンは生ワクチンであり、生きたままの弱らせた病原体から作られており、妊娠中に接種すると胎児に病原体が移行する可能性があるため、妊婦さんには接種できません。(※ 一方、インフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンは、死滅させた病原体から作られているため、妊娠中でも接種が可能です。)
当院でも妊娠初期には風疹の抗体価を調べていますが、妊婦さんに抗体がないことが明らかになっても、妊婦さんには風疹ワクチンを接種することができないので、大変心苦しいのですが「風疹に感染しないように気を付けて下さいね」としか言えないのが現状です。(風疹の感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染で、感染力がきわめて強く、免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%が発症するにもかかわらず、です。)
したがって、妊娠を考えている方は麻しん・風しんの抗体があるかどうかを早めに調べて、十分な抗体がない時には、早めにMRワクチンを接種することが非常に大切です。横浜市では、妊娠を希望している女性とそのご家族、パートナーの方は、公費助成を受けて無料で抗体検査を、3,300円でMRワクチンを接種頂くことができます。(詳細は下記「横浜市の公費助成について」をご確認下さい。)
接種時にあたっての注意事項
このワクチンは、あらかじめ約1ヶ月間避妊した後に接種し、ワクチン接種後も約2ヶ月間、避妊しなければなりません。そのため、妊娠を希望する場合は、早めにワクチンを接種して頂く必要があります。さらに、風疹ワクチンは、女性だけが接種すれば良いわけではありません。
日本の風疹の患者数は男性の方が女性より3から4倍多く、その男性患者の約6割が30代から40代と言われています。かつては、風疹は子どもの頃に感染し、自然に免疫を獲得することが通常でした。しかし、風疹ワクチンの接種率の上昇で、自然に感染する人が少なくなってきています。平成2年4月2日以降に生まれた方は2回風疹ワクチンを受ける機会があるため、免疫を獲得している方が多いのですが、男性においては、昭和54年から平成2年に生まれた方は、受けていたとしても1回しか受けていません。さらに昭和54年4月1日以前に生まれた男性は1回も接種の機会がなく、十分な免疫を持たない方々が増加しています。これが、風疹患者に男性が多い理由の一つと考えられています。
風疹は非常に強い感染力を持つため、ご主人が風疹の免疫がないと、飛沫感染によりご主人から妊娠中の奥様に移るという事例が多数報告されています。このようなことにならないためにも、ご主人様やパートナーの方も、まずは抗体検査をして、抗体が低い場合は、風疹ワクチンの接種をしましょう!(男性が風疹ワクチンを接種した場合は、接種後の避妊は必要ありません。)
接種するワクチンの種類
当院では、風疹の単独ワクチンではなく、麻しんと混合したMRワクチンを接種します。MRワクチンとは、麻しんと風疹を同時に予防するための混合ワクチンです。なぜ、麻疹も予防する必要があるのかというと、免疫のない妊婦さんが 麻疹にかかると、妊娠していない人よりも重症化し、流産、死産、早産の頻度が上昇するとともに、胎児の発育異常や羊水量の異常などが知られているからです。そのため、当院では風疹だけではなく、 麻疹を予防するためのMRワクチンを接種しています。
横浜市の公費助成について
以下に当てはまる方は、横浜市の助成を受けて、無料で風しん抗体検査(血液検査)を、また1回 3,300円(税込)で麻しん風しん混合ワクチンを接種頂くことができます。
費用(公費助成)
【予防接種】 麻しん風しん混合ワクチン 1回 3,300円(税込)
【抗体検査】 風しん抗体検査(血液検査) 無料
※ 最初からワクチンを接種するか、抗体検査後にワクチンを接種するか、どちらか選べます。
※ ワクチン接種後に抗体検査をする場合は、抗体検査は自費扱いとなります。
※ 麻しんの抗体検査をご希望の場合は自費扱い(4,270円)となります。
対象者
この公費助成を利用したことがない中学1年生以上の横浜市民で、
1 妊娠を希望している女性(妊娠中は接種できません)
2 妊娠を希望している女性のパートナー及び同居家族(婚姻関係は問いません。)
3 妊婦のパートナー及び同居家族
ご予約方法
ワクチンの在庫確保のため、インターネットにて1週間以上先のお日にちを指定の上、ご予約下さい。妊娠中には禁忌の(=接種してはいけない)ワクチンであるため、以下のいずれかをお願い致します。
・月経中を指定してご予約頂く(おすすめしております)
・前回の月経から一度も性交渉をせずご来院頂く
・ワクチン接種日の1か月前から【確実な方法で】避妊をして頂く
受診日当日は、健康保険証、マイナンバーカードなど、住所・氏名・年齢を確認できるものをお持ちください。受付にて、横浜市風しん対策公費助成接種希望の旨をお伝えください。問診票は院内にてご用意しております。
なお、ワクチン接種後も約2ヶ月間は妊娠してはいけないため、避妊をお願いすることとなりますので、併せてご理解下さい。
一般的な接種の流れ
はじめに風疹の抗体検査を実施して頂きます。そして値が低い場合は、問診後にワクチンを接種していただきます。接種後6週間後に抗体の再検査を行い、再び値が低い場合は追加接種をします。接種後2ヶ月間は避妊を必ずしていただきます。ご主人も希望があれば、抗体検査の実施とワクチンの接種が可能です。
ご注意
※「麻しん風しん混合(MR)ワクチン」、「風しん単独ワクチン」又は「麻しん・風しん・ムンプス混合(MMR)」の接種歴が合計2回以上ある方は対象となりません。
※ 横浜市風しん対策事業のご利用は一度限りです。