ノアルテン(月経移動)

旅行や試合など、大切な日にはできれば生理が重ならないようにしたい…そう思う方は多いのではないでしょうか?そんなときにおすすめなのが、ホルモン剤を使った月経移動です。月経移動には普通、中用量ピルというエストロゲンとプロゲステロンという2種類の女性ホルモンを含んでいるお薬(当院では「プラノバール」)を用います。低用量ピルより多くのホルモン量を含んでいるため、一定期間内服することで、生理のタイミングを調整できます。しかしながら、中用量ピルはホルモン量が多いため、吐き気、頭痛、乳房の張り、ごくまれにですが血栓症といった副作用が出ることがあります。そのため、特に40歳以上の方、喫煙者、持病のある方は使用できないことがあります。そのような方は、黄体ホルモン製剤である「ノアルテン」での月経移動がおすすめです。

黄体ホルモン製剤「ノアルテン」を使った月経移動の方法

ピルを使えない方や、副作用が心配な方には、黄体ホルモン製剤である「ノアルテン」での月経移動という方法があります。このお薬は、プロゲステロンというホルモンのみを含んでおり、血栓症リスクが少なく、副作用も軽めです。使い方は中用量ピルと似ており、生理を遅らせたいときにイベント直前まで飲み続けて、服用を中止すると2~5日後に生理が来ます。

ただし、中用量ピルによる生理移動に比べて、本来のホルモンのメカニズムから考えると少し不確実となります。中用量ピルにしても黄体ホルモン製剤にしても飲み忘れるとうまく生理が起きないばかりか、途中で出血が始まってしまいますので、飲み始めたら決められた時間に服用するなど、 しっかり服用を続けることが大切になります。

費用:ノアルテン  月経移動1回につき  3,300円(税込)
※ 月経移動1回につき10錠前後
(ノアルテン1シート(10錠)3,300円 10錠以上必要な場合は1シートにつき+1,100円追加加算)※バラでは処方しておりません
※ 再診料、指導料、処方料、薬剤情報提供料などは特に頂いておりません。

月経移動の方法について

生理を遅らせる方法

はじめに、生理を遅らせる方法についてご説明いたします。生理予定日の5日~7日前からノアルテンを1日1回飲み始めます。その後、大事な予定が終わるまで飲み続け、服用を中止すると2~5日後に生理が始まります。

この方法は、生理を確実にコントロールしやすいというメリットがあります。特に、1週間から10日程度の移動であれば、ほとんどの方がうまくいくと言われています。ただし、2週間とか3週間など長期間生理を遅らせようとすると、途中で出血してしまうことがあるため、注意が必要です。

また、お薬は毎日決まった時間にしっかり飲む必要があります。飲み忘れると、思わぬタイミングで生理が来てしまうことがあるため、海外旅行中など大事なイベントの期間中に飲み忘れて生理が来てしまうといったリスクもあります。

遅らせる場合、大事なイベントもお薬を内服しないといけないということが最大のデメリットです。ピルの副作用で、大事なイベント中に吐き気や頭痛、胸の張りなどの症状が出る場合もあります。

それでは、生理を遅らせたい場合、いつ頃、婦人科を受診すればいいのでしょうか?生理を移動したい月のひとつ前の生理が始まったころから月経予定日の7日前までです。一番良いタイミングは、生理をずらしたい月のひとつ前の生理が始まったころです。生理がきっちり来る方でも、数日ずれることはよくあるので、移動したい月のひとつ前の生理が始まった頃であれば、ずらしたい予定の生理日がある程度予測でき、お薬を飲み始めるタイミングもお伝えしやすいです。移動したい生理予定日の7日前から内服していただきますので、遅くともそれまでにはご受診頂く必要があります。あまり直前すぎると薬の期待する効果が間に合わない可能性があるので注意して下さい。

生理を早める方法

生理を早めたい場合は、1つ前の生理が始まって5日目からピルを飲み始めます。最低10日間飲み続けてから服用を中止すると、3~5日後に生理が来ます。この方法のメリットは、イベント当日にはお薬を飲まなくてよいことです。たとえば、海外旅行や結婚式など、忙しい日程の中で薬を飲み忘れる心配がないのは安心ですよね。大事なイベントの最中に、吐き気や頭痛、胸の張りなどの副作用に苦しむ心配もありません。ただし、生理を早める方法には、いくつかデメリットがあります。

まず、必ず1つ前の生理の5日目までに婦人科を受診して、お薬の服用を始める必要があるということです。この方法は、卵胞卵巣の卵の発育を止める方法になるのですが、卵胞が発育して排卵が始まってしまうと、計画通りに生理をコントロールできないので、飲みはじめるタイミングが非常に重要となります。1つ前の生理の5日目を過ぎると、体の中で卵が育ち始めてしまい、計画通りに生理をコントロールできないことがあります。また、生理が早まったとしても、その生理が何日で終わるかは人によって違います。そのため、生理を遅らせる方法に比べて、成功率はやや低めで不確実です。例えば、生理を1週間早めたつもりだったのに、普段は5日で終わるはずの生理がイベント前に限って長引いたり、不正出血が起きたりして、結局イベントと重なってしまう可能性もあります。

さらに、お薬を飲むのをやめたら、大抵3日後くらいに生理が来るはずですが、人によってはお薬をやめてから7日くらい生理が来るまでにかかる場合もあります。そのため、「絶対にこの日は生理を避けたい」という場合には、生理を遅らせる方法の方が確実です。

それでは、「生理を早める方法」を希望する場合、いつ婦人科に行けばよいのかについてご説明します。この方法では、ずらしたい生理のひとつ前の月の生理が始まってから5日目までにノアルテンを飲み始める必要があります。そのため、受診のタイミングとしては、「1つ前の月の生理が始まる前」または、「始まってすぐ」がベストです。遅くとも「生理5日目までに」受診して頂かないと間に合わないのでご注意ください。

早めるか遅らせるか迷った場合の考え方

それでは、「遅らせる方法」と「早める方法」、どちらを選べばよいのでしょうか?お薬をイベント当日に飲みたくない方は、「早める」方法がおすすめです。イベント中に体調への影響を心配せずに済みます。

一方で、できるだけ確実に生理を避けたい方は、「遅らせる」方法の方が、コントロールしやすく成功率が高い傾向にあります。しかし、「早める」方法は前の生理直後から始める必要があるため、受診のタイミングが遅れた場合は「遅らせる」方を選ぶことになります。どちらの方法を選ぶにしても、一番良い受診のタイミングは、生理をずらしたい月のひとつ前の生理が始まったらすぐに受診することです。そうすれば、どちらの方法も選ぶことができます。

40歳以上の方・喫煙者・持病のある方で月経移動を繰り返す方へ:ミニピル(スリンダ)という選択肢

「生理をずらすのが年に何度もあって、そのたびに病院に行くのが大変」そんな方には、ミニピル(スリンダ)の継続服用がおすすめです。

これまでピルを服用することのできなかった喫煙者の方や40歳以上の方、高血圧、肥満、脂質異常症、前兆を伴う片頭痛をお持ちの方、血栓症リスクのある方などは、低用量ピルではなくミニピルである「スリンダ」を用います。

スリンダは、毎日1錠を飲み続けることで、生理周期を安定させ、イベントに合わせて休薬期間を調整するだけで生理日をずらせるというメリットがあります。

ただし、長期間連続して服用すると不正出血が起こる可能性があるため、適切な期間の調整が必要です。生理を遅らせることができるのは長くても7日から10日ほどです。

スリンダによる生理移動のメリットは、ホルモン量が少ないピルを使うので、吐き気やむくみの副作用が少なく済むことと、毎回の月経移動で病院に行かなくても済むことです。

デメリットは飲む期間が長くなりますので、飲み続ける習慣をつけないといけないということです。

スリンダによる調整の場合、安定するのに少し時間がかかりますので、予定の3ヶ月前に服用を開始すると、体も慣れてきて安心です。したがって、数ヶ月先の生理日を調整したい場合には、スリンダを使用した生理日移動をおすすめします。

このように、日常的にスリンダを服用していれば、生理日を自分で管理しやすくなり、予定が立てやすくなります。不正出血がまれに起こることはあるものの、基本的には安定した生理周期が保たれます。また、スリンダは生理の調整だけでなく、月経痛の軽減や子宮内膜症の予防、生理周期の安定化など多くの健康上の利点もあります。

そのため、年に何度も生理をずらしたいという予定がある方には、スリンダの定期的な服用を強くおすすめします。ピルを使うことで、急な予定にも慌てずに対応でき、快適に日常生活を送る手助けとなるでしょう。

今回、ノアルテンを処方予定の方でも、ご希望がある場合には、同時にスリンダの処方も行うことで、次回以降の月経移動の際に婦人科を受診することなく、自由に生理周期を変えることが可能になります。詳しくは受診時にご相談下さい。