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液状化検体細胞診(Liguid Based Cyzology:LBC)とは

本年度より横浜市の子宮がん検診において従来法(直接塗抹法)だけでなく、液状化検体細胞診(Liguid Based Cyzology:LBC)も認められるようになりました。患者様の負担額は従来のまま変更ありません。

20歳~69歳の方:頸部のみ1,360円、頸部+体部 2,620円

従来法と液状化検体細胞診の違い

そこで、子宮がん検診における従来法(直接塗抹法)と液状化検体細胞診(LBC)の違いについてご説明したいと思います。

従来の細胞診(子宮頸部の細胞診)は直接塗抹法といい、綿棒やヘラのようなブラシで子宮の入り口をこすって細胞を採取し、そのブラシをスライドガラスに塗り付けて乾燥させて塗抹標本の状態で検査に出していました。

しかしながら、その方法であると、①血液や粘液が多すぎたり少なすぎたりしてしまう②細胞を乾燥させないように素早く均一にスライドガラスに塗り付けることが難しく、細胞が重なり合ってしまう③乾燥による変性など細胞の保存の不良が起こる④採取したブラシはスライドに塗抹後すぐに捨てられてしまい、捨てられるブラシの中に約90%の細胞が残っている、という問題点がありました。

①②③については分厚い塗抹、細胞極少数など判定に適さない不適正標本による誤判定が起こることになり、これらが擬陽性の70%を占めると考えられています。④については破棄された細胞の中に癌細胞がひそんでいる可能性が高いという指摘があり、実際に過去にこの問題により、悪性にもかかわらず良性と報告されるという事例も報告されています。

このような従来法の問題点を改善するために、採取したブラシをすぐに液体保存液に入れてすすぎ、その保存液ごと検査に提出してしまうことにした検査法がLBCで、米国(アメリカ)を中心として最近世界的な広がりを見せている細胞診検査です。LBCでは採取した細胞の大部分を捨てることがないので、ほぼ全ての細胞を有効利用することができるというメリットがあります。

LBCでは内診室で採取した細胞をバイアル保存液に入れて検査会社に委託します。検査会社では、自動塗抹装置で判定には重要ではない細胞の断片から細胞を分離し、薄くて均一な厚さの顕微鏡で検査しやすい標本を作ります(同じような品質の標本をいくつか作ることも可能です)。

さらに3カ月くらいの長期保存が可能であるので、異形成が疑われた場合には、もう一度内診をしなくてもHPVなどの追加検査ができるというメリットもあります(細胞診は6週、HPVは3カ月)。異形成が疑われた場合に、何度も内診台に上がり検査を受けなくても良いというのは患者様にとって精神的な負担が減ることになります。

婦人科細胞診の現状としては、従来法が日本では90%を超えてますが、米国(アメリカ)ではLBCの普及率が95%を占めており、実際にLBCの普及とともに、子宮癌の発症数は減少しています。

ちなみに滅多にないことではありますが、患者さんが希望すれば、保存してある検体を淋菌とかクラミジアなどの子宮がん検診以外の検査に利用することも可能です(以前の検体で性病検査をしても、あまり意味はありませんので機会はなさそうですが・・・)。

液状化検体細胞診のデメリット

良いことづくめのLBCではありますが、デメリットもいくつかあります。まず第一に検査会社に検査を依頼する時のコストです。とりわけ消耗品の費用がかかるため、医療費の負担が高くなります。

そのため、現状では保険診療においては、子宮がん検診を受けるすべての患者様にこの検査を行うことは保険請求で認められておらず、異形成などで再検査になった場合にLBCを行うことが一般的です。

このようにLBCはコスト面で割高になる検査なのですが、横浜市のがん検診においては、患者様の負担額は変わらずに横浜市が検査費用を負担してくれることになりました。

そういったわけで、当院では横浜市のがん検診を受診される患者様には基本的にはLBCでの検査をお受け頂くようにおすすめしております。また、自費検査についても+500円でLBCでの検査をお選びいただけるように致しました(保険診療でも全員に認めてほしいのですが仕方ないですね・・・)。

二つ目の問題点として、採取の時に専用のブラシを子宮口に軽く当てて5回転させて細胞を採取する必要があるため、2~3日おりものに血が混じりやすくなるということがあります。痛みについては、ほとんど変わらないとは思いますが、痛みに極端に弱い方であれば違いを感じることもあるかもしれません。

そのため、当院では妊婦さんの子宮頸がん検診においては、従来法のまま検査を行っております。妊婦さんは普通の方よりも子宮の入り口がやわらかくて充血してるので、以前から専用のブラシを使わずに綿棒でこすって、塗抹を行っており妊婦さんについてはこの方法をそのまま変えていません。

まとめ:従来法と比べたLBCのメリット

従来法(直接塗抹法) LBC(Liguid Based Cyzology)
採取された細胞の多くが使用されず捨てられる 採取された殆どの細胞を回収できる
採取された細胞の一部の状態だけが反映される 検体の全体の状態が反映される
細胞が重なり合ったり塊(かたまり)を作ってしまう 細胞が均等に分布されて検査される
細胞像を不明瞭にする成分(血液、粘液等)が多い 不明瞭成分を最小化する事ができる

さらに米国では、LBCの普及にともない従来法の問題点が明らかになってきています。それによると、FDA(米国食品医療品局=日本の保健社会福祉省に属する機関)に承認されている従来の細胞診検査と比べて下記のように信頼性が高く、今後の子宮癌検診の中心になると思います。

  • LSIL(軽度扁平上皮内病変)以上の検出において有意に効果がある。
  • 子宮頸部癌に速やかに進展し易い前駆病変であるHSIL(高度扁平上皮内病変)の検出率が向上した。

今後、コストの問題や細胞診の見方に慣れる事は必要となりますが、LBCは以下のようなメリットがあります。

  • 不適正の標本を少なくする
  • 子宮頸部の疾患の検出率を向上させる
  • HPV、クラミジア、淋菌などの分子生物学的診断も可能

※しかしブラシでこすっているため、痛みを感じる可能性が少しだけ高くなり、2~3日は出血が多くなることがあります。

(が、ブラシの先は柔らかいゴムでできていて、実際に当院でLBCだからといって患者様が痛がっている様子は見られませんので過度な心配は不要かと思います。)

以上のことから、当院では以下のように子宮がん検診を行ってまいります。

当院の子宮頸がん検診における検査法

検診の種類 基本検査方法 その他の検査方法
横浜市がん検診(一般の方) LBC 希望により従来法も選択可能です
横浜市がん検診(妊婦さん) 従来法(綿棒) LBCはおすすめしません
自由診療 従来法 希望によりLBCも選択可能です
保険診療 従来法 異形成が疑われた場合などはLBC
(医師の判断によります)