中絶手術後の生活上の注意点
帰宅後の安静期間
手術当日は、出来るだけ安静にすることを指示させていただいています。（当日の車の運転の禁止、仕事はしないようにお願いしております。）原則的には2-3日の自宅安静を指示致しますが、翌日から普通の生活をして頂き、身体に無理な負担がなければ（事務職で座っていることが出来るお仕事の場合などは）仕事をして頂いている方もいます。少しずつ身体を動かして、子宮の回復につとめていただいております。
手術後の入浴
手術当日は入浴不可とさせていただいております。出血、軽度の疼痛が収まるまでに7〜10日間かかりますので、翌日から1週間は感染防止のため浴槽にはつからないでシャワーのみとして下さい。約1週間後（患者様の希望日を指定可能）の手術後診察で問題がなければ入浴可とさせて頂いております。
手術後の衛生管理
手術後は出血が収まるまでは感染防止等の理由から、タンポン等の使用を避けて、清潔なナプキンをこまめに取り替えるようにしましょう。
服薬について
抗生物質は感染症を防ぐのに必要なお薬です。またや子宮収縮子宮を回復さえるために必要なお薬です。どちらも処方された日数分、飲みきって頂くことが大切です。一方で、鎮痛剤は痛みがない場合には必ずしも服用しなければならないものではありません。十分な量の鎮痛剤を処方しておりますが、もし鎮痛剤の不足に気がついた時には、我慢できる程度の場合は市販の生理痛の薬を服用し、後日来院して頂いても構いません。（激しい痛みや発熱の場合には、昼間はクリニックまで、夜間は術後にお知らせする院長の携帯までお電話ください。）
中絶手術後の出血
中絶手術後は基本的に出血があります。（分娩が終わった後の悪露と同じです）出血の程度は期間、量ともに個人的な差がありますが、1週間から10日が普通です。長い人では出血が続いたまま次の生理を迎えて、1ヶ月近くに及ぶ方もいらっしゃいます。逆に、量もほとんど認めずおりもの程度の量の方から、月経程度の量が断続的に続く方、数日たってから急に塊と共に出血する方、最初から多量の出血が2-3日続き、その後少なくなる方など様々です。出血が多めにあることもありますが、数日で少なくなることがほとんどです。おりものに混じるような茶褐色の出血が2週間近く続いてその後微量になり、そのまま月経を迎えることもありますが、出血が少量であるなら心配はありません。
中絶手術後の出血と痛みの原因は、手術後の残った内膜や溜まった出血が、中絶手術後の子宮収縮により排出されることにより起こります。この時の痛みは生理痛のような痛みで、痛み止めの服薬によりコントロールが可能な程度ですので、過度な心配はいりません。子宮の収縮の痛みは、子宮が順調に回復をしている証拠です。
私の経験では、中絶手術後すぐに運動した方、性交渉をしてしまった方（2週間は避けるように指導しておりますが・・・）は子宮に対する刺激が原因と思われる出血が続くことがあります。また、帝王切開の既往がある方、子宮が後傾、後屈傾向の方なども、血液が子宮内部に溜まりやすいため、出血が続く傾向にあります。
一概に出血が少ないから良いということではありません。ごくまれにではありますが、子宮の収縮（＝回復）が良い場合で出口が早くに完全に収縮してしまいますと、逆に出血や悪露が上手く外に出ないで内部に血液が溜まってしまうケースもあります。そのような場合は腹痛を感じたり、場合によっては発熱を伴うことがありますので、激しい腹痛や高熱が見られた場合にはすぐにご来院下さい。
＜注意＞
※ 手術後の二度の検診（一度目は翌日か翌々日、二度目は一週間程度後）は、上記のようなことがないかを超音波により確認するために必要なことです。二度目の術後検診においでにならない方がたまにおられますが、どうぞ過信なさらずに術後検診はきちんと受けるようにして下さい。
※ 手術後に激しい腹痛や高熱が見られた場合には、予約なしでも診察致しますので、日中であればすぐにご来院下さい。夜間の場合はお知らせしている院長の携帯電話までお電話下さい。
※ ごくまれに「お昼間から痛かったのですが」、と深夜にお電話を頂戴することがあります。ご来院の上、超音波で確認しないと正確な判断は下せませんので、日中から激しい痛みや高熱がある場合には、夜でも電話がつながるからと先延ばしせずに、日中に診療時間内にご来院を頂いた方が患者様にとっても身体的負担が少なくて済みます。日中に激しい痛みや高熱がある場合には、大変かとは思いますが、お仕事等は一旦、中断するか早退などの上でご来院をお願い致します。
手術後の妊娠検査薬の使用
中絶手術後に胎児が残っていないか心配になって、妊娠検査薬を使用したら陽性反応が出たと、慌ててお電話を下さった患者様が過去におられました。
中絶手術後に胎児が残っているのではないか、とご不安な気持ちはわかりますが、当院ではそのようなことのないように、手術後には必ず超音波で複数回（4回）にわたって遺存を含めた子宮回復の確認を致しておりますのでご信頼頂ければと思います。
尚、中絶手術後でも、手術後2〜3週間は市販の検査薬で陽性反応が出るのは当然のことです。
理由：
妊娠検査薬では、尿中のhCG（ヒト絨毛性ゴナドトロピン）に対する反応を調べます。妊娠するとhCGが胎盤から分泌されますが、このhCGは尿中にも含まれているホルモンで、妊娠検査薬はそれを検出して陽性の変色反応を示します。現在では尿検査の妊娠判定薬の精度が非常に向上しており、ごくわずかなhCG値であっても正確に陽性か陰性かを判断出来ます。これを「定性反応」と言い、ごくわずかな反応であっても＋（陽性）として出ます。（例えるならコップ一杯の中にたった１滴でもあれば反応が陽性として出ます。）
そして中絶手術後2週間くらいの間は、胎児から出たhCGホルモンが日に日に減ってはいくものの母体の身体の中に残ります。そのため、中絶手術後や流産（稽留流産を含む）の後はしばらくの間、妊娠検査薬の反応が陽性になることがあります。
◆ ご注意ください！
- 中絶手術後はおよそ2週間後には出血や悪露は止まりますので、性交渉を再開して頂いても構わないのですが、この時期はちょうど排卵の時期にあたり、中絶手術後、次の生理を待たずして連続して妊娠してしまう方が実際におられます。その間に性交渉のあった方は、次の妊娠の可能性もありますので、必ず受診して下さい。
- 中絶手術後、本来月経が来る頃（25日後〜50日後）になっても陽性反応が出た場合は、子宮内と子宮外の同時妊娠だった、胞状奇胎などの異常妊娠だった、避妊したにもかかわらず再度妊娠したなどのケースがありえますので、受診して下さい。
- 妊娠反応の強さについては血液検査（定量検査）でhCGの値を調べることでわかりますが、中絶手術後は血液検査でhCGの値が減ることを確認まではせずに、超音波で遺存がないかを調べることが一般的です。血液検査（定量検査）による測定は、子宮外妊娠や胞状奇胎などの異常妊娠を疑った場合などに行います。
＜参考＞
当院では手術後に以下の4回の内診で超音波検査を行い、その全ての内診時に子宮内に遺残がないかを念入りに確認致して、カルテに記載しておりますのでご安心下さい。
- 手術終了後すぐ（患者様は麻酔下で意識がない状態）
- 退院前の内診時（当日の帰宅前）
- 1回目の術後検診時（翌日か翌々日）
- 2回目の術後検診時（約1週間後）
※ 術後検診は1回目、2回目ともに患者様のご希望の日時を指定可能です。
