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マンモグラフィと乳房超音波の総合判定について

先日(9月8日)日曜日、台風に怯えながら名古屋まで日本学会乳癌検診主催のマンモグラフィと乳房超音波検査を併用する総合判定講習会に参加して参りました。年に一度しか開催されないこともあり、未曽有の大型台風接近という状況であるにもかかわらず、日本全国各地から医師だけではなく放射線技師、臨床検査技師の方々までもが多数参加されていました。このことから、どれだけ多くの医師・放射線技師・臨床検査技師が総合判定に深い関心を寄せ、その重要性を認識しているかということがわかります。総合判定については、本来なら一介の産婦人科開業医である私が何か述べる立場にはないのですが、患者様からよく聞かれる質問の一つに、「マンモグラフィと超音波検査、どちらを受けるべきですか?」というものがあり、患者様への啓蒙活動が開業医の務めと心得ることから、この場で少しご説明をしたいと思います。

まずはじめに、マンモグラフィと乳房超音波検査には、それぞれのメリットとデメリットがあります。これについては、前回の記事を参照して頂きたいのですが、まとめると以下の表のようになります。

メリット デメリット
マンモグラフィ
  • 広い範囲の読影が可能で、細かな石灰化や構築の乱れを見つけることに適している。
  • 精度管理のしくみが整っており、認定を受けた医師・技師しか撮影・読影を行うことができないので、検査精度が保証されている。
  • 乳がんの死亡率を下げることが、証明されている。
  • 過去の画像と比較が容易である。
  • 日本人、とりわけ若い方に多い高濃度乳腺の方などでは、細かなしこり(腫瘤)と乳腺の区別がつきにくいため、発見が難しい場合がある。
  • 妊娠中・授乳中・ペースメーカーが入っている方、乳房豊胸術を受けた方は受診できない。
  • 乳房撮影時にパネルで圧迫を行うため、人により、さらには撮影のタイミング(月経前など乳腺が発達している時期など)によっても、痛みを感じることがある。
  • 人体に影響のない範囲でごくわずかではあるが、被ばくの心配がある。
扁乳房超音波検査
  • 細かな腫瘤(しこり)を見つけることに適している。
  • しこり(腫瘤)の中の状態や広がり具合まで観察することができる。
  • 乳腺と乳がんのしこりの判別がしやすい。
  • 妊娠中・授乳中・ペースメーカーが入っている方でも検査を受けることが出来る。
  • 被ばくの心配はないので、繰り返して検査を行い経過観察を行うことに適している。
  • ゼリーをつけてプローブを当てていくだけなので、痛みを感じることはほぼない。
  • 微細石灰化については見つけにくいことがある。
  • がん以外の良性の所見も見つかりやすく、単独の検査では要精検率が増加する。
  • 検査を行う人の技術に大きく依存する検査であるにもかかわらず、国による精度管理はこれからであるので、一定の検診精度が保証されているとは言い切れない。

このように、マンモグラフィと超音波検査には、どちらもメリットデメリットがあり、一概にどちらが良いとは言い切れないところがあります。総合的にふまえて、横浜市の乳がん検診では、マンモグラフィ検査が行われておりますが、これは横浜市をはじめとする自治体検診が対策型検診であり、マンモグラフィは死亡率を減少することが証明されている一方で、超音波検査においては死亡率減少効果がまだ証明されていないことに理由があります。その経緯としましては、乳房が小さくて高濃度乳腺の人が多い日本人においては、乳房超音波検査は、マンモグラフィでは検出できない乳がんが発見できる可能性がある検査であり、我が国では1950年代から行われてきました。そのため、厚生労働省は、「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)」を実施し、75,000人を超える大規模な被験者による研究を行ってきました。しかしながら、この実験では、マンモグラフィと超音波検査はそれぞれに独立判定(別の医師がそれぞれ個別に判定を行う)であったこともあり、どちらかでカテゴリー3以上となった場合には要精密検査となってしまい、乳がんの検出率は上がったものの、擬陽性例が増え、要精検率が上昇してしまうという問題が発生しました。さらに、この実験においては、死亡率低下にはつながらない(つまり、発症して命にかかわるとしてもかなり先のこととなるような)早期の浸潤癌が多く発見されたことから、乳がんの検出率は上がるものの、死亡率低下にはつながらず、過剰診断となってしまうという問題点も指摘されました。

これを読んで下さっている患者様の中には、たとえ早期の浸潤癌とはいえ、乳癌を発見できたにもかかわらず、死亡率低下につながらないという理由だけで過剰診断という言葉を使うことに驚かれる方もおられるかもしれません。過剰診断とは、放置していても命には当面のところ、かかわらないような癌を検診によって診断することで、過剰診断は過剰治療につながってしまうという考えです。横浜市をはじめとする自治体検診が限られた財源でより多くの人の命を救うという使命を帯びている観点からは、ある意味では正しい価値観であるといえます。 このような理由から、現在でも横浜市の乳がん検診においては、マンモグラフィ検査に加えて選択式で視触診が行われているのみで、超音波検査は実施されておりません。超音波検査は、マンモグラフィで異常があった場合や、自覚症状がある場合に限り保険適用が、また任意型検診での自費による検診が行われているにすぎません。

先ほど、厚生労働省が行った、「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)」において、マンモグラフィに超音波検査を上乗せすることで、要精検率が上昇してしまい、結果として過剰診断につながったということをご説明しましたが、では任意型検診(主に自費の検診)においては総合判定を行った場合にはどうでしょう。総合判定とは、マンモグラフィの読影を行う二人の医師のうちの一人が、超音波検査の判定も行う判定方式です。J-STARTにおいては、マンモグラフィと超音波検査は、別の医師がそれぞれ個別に判定を行う独立判定方式でしたが、総合判定では同じ医師が読影と超音波検査を実施するという点において大きな違いがあります。一人の医師が、マンモグラフィ所見を参照しながら超音波検査の所見を総合的に判断してカテゴリー判定を行うことにより、しこり(腫瘤)の中の状態や広がり具合までさらに精密に観察することができ、独立判定の場合よりも乳がんの検出率を上げ、かつ独立判定方式で問題であった要精検率も下げることが期待できます。つまり、マンモグラフィや乳房超音波検査のどちらか単独であれば、要精査となり総合病院などにご紹介しなければならなかった患者様も、任意型検診で総合判定を行うことによって、一人の医師がより詳しい検査結果から判定を下すことができるために、要精検率を下げることが期待できるのです。(実際に、つくば総合検診センターにおける検診では総合判定により要精検率が超音波検査単独以下になることはないという結果が出ています。)もちろん、高濃度乳腺の場合などにおいても、マンモグラフィでは判定が難しかった細かな腫瘤を超音波検査で発見することができるという利点はそのままです。このことから、現在では任意型検診(主に自費の検診)を中心として、マンモグラフィと超音波検査の併用検査が広く実施され、一人の医師がマンモグラフィ、超音波検査、視触診の検査結果を総合的に判定し、悪性か否かを絞り込む作業を日常的に行っており、受診者の不利益を最小化し、利益を最大化するためには、総合判定が望ましいことは言うまでもありません。

しかしながら、ここにおいて一つの課題があります。医師は専門職のわかりやすく言えば分業方式の職業ですので、マンモグラフィの読影認定資格を持つ医師が、必ずしも乳房超音波検査において専門性があるとは言い切れません。そもそも、乳房超音波検査は検査を行う人の技術に大きく依存する検査であるにもかかわらず、国による精度管理はこれからなので、一定の検診精度が保証されているとすら言い切れない状況にあります。マンモグラフィ単独においては、精度管理のしくみも整い、日本全国で同じ水準の検査が受けられるように日本乳癌学会によりガイドラインが策定されておりますが、総合判定においては当然のことながらまだガイドライン策定までには至っておらず、総合判定ができるスキルを持つ医師の育成が望まれています。このような経緯から、マンモグラフィと乳房超音波検査を一人の医師が同時に行う場合の判定において、事細かな基準やガイドラインの策定が必要とされており、一人でも多くの総合判定を行うことのできる医師を育成しようと細かな基準を提示し、多くの医師に細かな症例の判定方法について解説を実施しているのが、冒頭の日本学会乳癌検診主催の総合判定講習会です。検診における患者様の利益を最大に、不利益を最小とすることを目標として掲げ、献身的な努力をなさっておられる大貫先生をはじめとする日本乳がん検診学会総合判定委員の諸先生方においては、本当に頭の下がる思いでおります。
先生方のご尽力の結果、近年では、マンモグラフィと乳房超音波検査を併用した判定基準が総合判定マニュアルとして作成されています。そして近い将来、改訂を加えながらにおいて精度の高いマンモグラフィと超音波検査の併用検診が可能となり、検診の利益と不利益のバランスが保たれた精度の管理が行われて乳癌の死亡率減少効果が若年世代にも実現されることが期待されております。

当院の乳癌検診は開始当初よりこの総合判定を取り入れており、より精度の高い乳がん検診を患者様にご提供すべく、医師はもとより技師の技術、知識の向とスクリーニングのスキルアップを目指しております。 横浜市では、40歳以上の方であれば横浜市の助成を受けて2年に1回1,370円の自己負担でマンモグラフィと視触診を受診頂くことができます。また、本年度41歳になる横浜市民には、乳がん検診の無料クーポンが送付されています。当院では、この横浜市乳がん検診の制度に自費での乳房超音波検査(5,000円)を追加することにより総合判定を受けることが可能です。がんは早期発見、早期治療が大切です。この記事を最後まで読んで下さった患者様におかれましては、ぜひマンモグラフィと超音波検査のどちらか一方ではなく、両方のご予約をお取りになり、総合判定をご受診下さいますことをおすすめ致します。

講習会の内容はかなり専門的であるため、こちらでは割愛させていただきますが、前回参加させていただいたときよりも非常に密度の高いものでした。台風騒ぎで、講習会の主催者の方々は何とか少し早めに講習会を終了させて、遠方からの医師を帰して下さろうとご配慮下さり、多少駆け足の講義ではありましたが、大変充実した会でした。帰りの名古屋駅は新幹線の乗車券を求める人でごった返していていましたが、帰りの乗車券を買っておいたので、何とか岐路に着くことができました。しかし、翌日月曜日の外来は大渋滞に巻き込まれ、普段30分で着くはずの自宅からクリニックまでの運転に3時間30分もかかり(自宅から自分のクリニックが名古屋よりも遠く感じられました・・・)あろうことか人生ではじめて外来に遅刻してしまい、患者様を1時間もお待たせする事態となってしまいました。今も台風の影響で被災したり、大変な目に合っておられる方々が、一日でも早く普段の生活に戻ることができるよう、心から祈念してしめくくりとさせて頂きます。